ノキア、マイクロソフト戦略提携 - 関係者の反応は「まだら模様」

ノキアNokia)が英国時間11日にマイクロソフトMicrosoft)との包括的な戦略提携を発表したが、これを受けてウェブ上では関連業界や株式市場関係者からのさまざまな反応が上がっている。

まず投資家の反応だが、マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー(Steve Ballmer)氏も同席したこの提携発表のなかで、ノキアNokia)のステファン・エロップ(Stephen Elop)CEOが、2011年から2012年を「移行期」とし、具体的な業績見通しやコスト削減策などを明らかにしなかったことから、同社の株価は一時、2009年7月以来最大の下げ幅となる2ケタ(Bloomberでは14%、またWall Street Journalでは18%)の下落を記録した。

またBloombergでは、英アビエイト・グローバル(Aviate Global)のアナリスト、ニール・キャプリング(Neil Campling)氏の「まず頭に浮かんだのはノキア株を手放すということだった。ノキアはタダ同然で(マイクロソフトに)自社を身売りしたようなもので、グーグル(Google)とアップル(Apple)は笑みを浮かべながら寡占状態にむけて進んでいくだろう」とのコメントを紹介。また同じ記事のなかには、サンフォード・バーンスタイン(Sanford Bernstein)アナリスト、ピエール・フェラグ(Pierre Ferragu)氏の「この提携関係は、それを実行に移し、製品を発売するまでに時間がかかるだろう。それがノキアの死につながる可能性がある」とするコメントも採り上げられている。

いっぽう、「この提携で大いに得をするのはマイクロソフトだが、ただし現在のiPhoneAndroidの勢いを考えると、両社にとって特効薬となるものはない」とCSSインサイト(CCS Insight)アナリストのベン・ウッド(Ben Wood)氏はBloombergに対してコメントしている。

ノキアの「Symbian OS」搭載端末とマイクロソフトWindows Phone 7」採用する携帯端末をあわせた出荷台数は、2010年10-12月期に約3000万台と、同期に全体で1億台を超えた世界のスマートフォン市場のなかでおよそ30%を占め、急成長するAndroid陣営に比肩するシェアを持つことになる。これを踏まえ、戦略発表のなかで、ノキアのエロップCEOは「これで(アップル「iPhone」とAndroid勢、ノキア-マイクロソフトの)三頭によるレースになる」と述べた。だが、両社がどれほどのスピードで着実に戦略を実行に移せるかなどの点について疑問の声もあがっている。たとえば、米セファリム・グループ(Sepharim Group)のボブ・イーガン(Bob Egan)氏は「ノキアの欠点は戦略を実行に移すことが苦手だったところだが、マイクロソフトとの提携でこの点がさらに複雑になる」とTwitterでコメントしている。

対照的に、スペインのテレフォニカ(Telefonica)傘下の独O2でCEOを務めるレネ・シュースター(Rene Schuster)氏は、Wall Street Journalに対し、「この提携は戦略的に意味をなすもので、実際に両社にとってWin-Winとなるもの」との好意的な見方を示している。また、著名なIT系ブロガーで元マイクロソフト社員のロバート・スコーブル(Robert Scoble)氏も、「ノキアファンには不評なこの提携も、ノキアにとってはアプリ開発者集めに役立つことから、最終的には同社にとって良い結果につながるだろう」とコメントしている。

それに対し、これまでノキアSymbianプラットフォーム向けにアプリケーションを提供し、同社の「MeeGo」OSへの架け橋となるソフトウェア開発フレームワーク「QT」への移行を進めるサードパーティ開発者からは、ノキアWindowsベースの開発ツール採用を表明したことに対する落胆の声もあがっており、GigaOMでは「エロップ氏(のCEO就任)はノキアに起こったことのなかで最悪の出来事だ」とする「On Forum.Nokia」への投稿が紹介されている。

いっぽう、これまでWindows Phone端末を提供してきたサムスンSamsung)、LG、HTC、デル(Dell)といった各メーカーの動きに注目する声も見られる。マイクロソフト・ウォッチャーとして知られるメアリー・ジョー・フォリー(Mary Jo Foley)氏はZDnetブログに掲載したコラムのなかで、ノキアWindows Phoneの開発に深く関与することになる点を挙げながら、同社と競合するHTCやサムスンでさらなるAndroidシフトが進むとの可能性を示唆している。

これとは別に、この提携交渉をまとめたエロッップCEOについて、「ノキアの取締役会が、携帯電話機をもっと売るためにエロップ氏をCEOに招聘したのであれば、結果は失敗だった。いっぽう、会社を身売りさせるために同氏をマイクロソフトから連れてきたのであれば、それは正解だったといえる」とするクリス・セランド(Chris Selland)氏というTwitterユーザーのコメントも見られる。

また、IT業界をカバーするベテランアナリストのマイケル・ガーテンバーグ(Michael Gartenberg)氏は、Twitterを通じて「『自分の敵と敵対する相手は自分の友達」という理由から手を組むのは、ふつうはあまり良いものではない。誰かといっしょになるなら、共通の敵がいるから理由ではなく、その相手が大好きだからと思える相手を選ぶべき」との旨の考えを表明している。

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